以前レンスターを視察したアルテナからある話を聞いた。
吹けば飛んでしまいそうな粗末な建物で、アルテナよりもずっと幼い子供が孤児院を営んでいた、と。

アリオーンは空から解放軍を見下ろす。
その中には、真っ青な空色の帽子。固く結んだ輝く金髪。

レンスターの土壌は豊かで、だからレンスターの民の生活はトラキアの民のそれよりも豊かだというのは
決して覆ってはならぬ条件であった。

アルテナの話の中の孤児院が鮮烈に蘇る。
毎日ひもじい思いをして、帝国の圧政に喘ぎ苦しむ痩せ細った子供達。
小さな手で涙を拭い、気丈に振る舞う一人の少女。
狭い肩に希望を背負い込んだ一人の少年。

油断から隙が生まれる。
少女が振るった剣を腕で払う。
かすり傷は夢か現か。