窓の外に煙。薄い色の空に立ち上る煙。
ラケシスは顔を明るくする。
「今日はきっと雪ね」
部屋から顔を覗かせたラケシスを見上げ、ベオウルフは片手で挨拶をする。
それからくわえていた煙草を雪の上に落とし、ブーツの踵で火を消した。
「寒いからな」
「そんなことを言ってるんじゃないわ」
頬を膨らませてむくれて見せるが、それも短い間。
嬉しくて顔の筋肉はすぐに緩んでしまう。
「あなたから会いに来てくれるなんて珍しい。だから今日は雪ね」
「寒いからな」
「寒いから何よ」
「風邪をひいていないか心配になったのさ」
口の端に微笑を浮かべ、ベオウルフはラケシスの部屋の窓を閉めて去ってしまう。
懐から煙草の箱を取り出したが中身は空だった。
それでも窓の外には煙。薄い色の空に立ち上る煙。
吐息が真っ白になる、そんな寒い日に。