歩く歩く。真っ白な雪原を二人で歩く。
仲間の姿は周りにはない。
「駆け落ちみたいね」
雪よりも白い息をティルテュは宙に浮かせる。
真っ赤な頬。真っ赤な耳。真っ赤な指先。
彼女の父親の中では、自分が彼女をたぶらかしたことになっていた。らしい。
「それが冗談だったらどんなに素敵なことでしょうね」
逃げる逃げる。真っ白な雪原を二人で逃げる。
グランベルからの追っ手は周りには見えない。
クロードの溜め息は雪よりも白い。
泣き腫らして真っ赤な目のティルテュの手を取り、二人で小さな村を目指す。
風景の中にブラギの塔が聳えている。
遠く、微かに。