きっとあれは贖罪だったのだとセティは思う。
ティニーの伯父がイザークで権力を振りかざし、そしてティニーの伯父がレンスターの民を苦しめた、そのことに対しての。

「きっと贖罪だったのですね」

ティニーが呟く。

セティも同じだった。
セティの伯父はグランベルを、ひいては世界を良くない方向へ導いた。

そんな伯父に父は心を痛め、そして母を置いて家を出ていってしまった。
帝国軍を止めるために。

「贖罪だったのでしょう?」

もう一度ティニーが言う。

他国のために、シレジアのために一生懸命に戦う姿に母は心を惹かれたということをセティは知っていた。

知っていたのにセティは家を出た。
病気の母を残して家を出た。

きっとあれは贖罪だった。
父の真似をすることで善なる心を騙していた。

「敵わないな」
「全て、全て存じております」

博識の青の瞳がセティを見つめる。

きっと彼女は自分の母のことも知っているのだ。