セティの最後の希望は姫だった。 シレジア王家は揃いも揃って無責任な人間ばかりだ。 王も、その息子も。 人々を思いやるかくも深き御心を宿したラーナの血は一体どこへ消えてしまったのだ。 セティがため息をつくと、フィーもため息をつく。 フィーはアーサーが国よりも妹を優先したくなる気持ちに同情していた。 だってフィーも、出来ることなら兄に王家よりも自分の心配をしてもらいたい。 「それでお兄ちゃんはこれからティニー様にお会いするのね」 フィーのため息はますます深くなる。 レンスター地方に足を踏み入れて間もないフィーだって、ティニーがいかに圧政に苦しむ民に憂いを抱いているか知っている。 きっとマンスターの勇者の兄ならば尚更のこと。 それでも、何一つ疑いのない顔で、 「きっと分かってくれる」 断言する兄を止めようとフィーは思えない。 もしかしたらアーサーもセティも、フィーよりもティニーを優先するのが悔しかったからかもしれない。 そうかもしれない。 そうして今日一番に深いため息を一つ宙に浮かべた。