そのニヤニヤ笑いがティルテュのイライラを増幅させる。
意地が悪い。性格が悪い。
人が怒っているのを見て笑うだなんて。

「素直じゃないんだよ」

そう言って宥めるアゼルに、ティルテュは小石を蹴り飛ばす。

アゼルによると、レックスは本当はティルテュの笑顔が大好きらしい。

それならば、『ティルテュの笑顔は花より美しい』くらい言ってのければいいではないか。
大笑いだ、爆笑だ。
レックスの望んでいる花より美しいティルテュの笑顔だ。

素直じゃない、だから何。
それだけでティルテュの機嫌を損ねて何になる。

「素直じゃないなぁ」

そう言って肩を竦めるアゼルに、ティルテュは口を尖らせる。

レックスが素直じゃないのなんてもう何年も昔から知っている。
素直じゃないのは自分も同じ。

本当は本当は、ティルテュが笑顔を見せたときにレックスが笑顔じゃなくなってしまうのが怖いだけなのだ。

「素直になればいいのに」

目だけ素直で、視界が揺らぐ。