俺が行かなきゃ駄目なんだ、と父は言う。
アゼルにはアーサーの世話があって、お前たちには母さんがいるから、だから俺が行くんだ、と。
馬に飛び乗り、風を追い越す父の背中を見送った。
一度も振り返らずに手を振っていた。
父の言葉から察するに、アゼルという人とその妻のティルテュという人は父の幼馴染みらしい。
その夫婦の娘のティニーの顔は見たことないけれど、きっと二人に似て可愛い顔をしていると言っていた。
『俺が駄目だったときは、セティ、お前が代わりに助けてくれ』
セティの頭を撫でて笑った。
父は不思議な人だった。