リーンのよく知っているあの人は父親の幻影を追って、乗馬しながら剣を振り回している。
「だからあなたもそうなんでしょ」
見上げる角度はアレスよりも少し低いくらい。
弓を片手に出陣しようとしているレスターにリーンは声を掛けた。
「そういうわけでもないよ」
昔々、シグルド軍には一人のアーチナイトがいたと聞いたことがある。
しかしその人はレスターの父親ではないし、歩兵の方の弓兵もそうではない。
「どちらかと言えば君に近い理由だ」
リーンが母親を探すために踊り子となったのは軍内では有名な話である。
「あなたの母親って」
アーチナイトを多数抱えるユングヴィ家のお姫様。
彼女は行方不明となった姉を探していた。
「あなたのように弓を使っていたのね」
「そうじゃないよ」
自分も母と同じ。セリスと行軍を共にする傍らでイチイバルを使える従兄弟の存在を探している。
「よく分からないけど、うん、今日はあなたについていきたいな」
いいでしょ?
そう言いながらリーンはレスターの顔を見上げる。
今日はこの角度がしっくりくる気分。