一時の燃え上がるような情熱について、あれは恋だったとセリスは言う。 そんなセリスの思い出話に、ユリアは緩やかに微笑む。肯定をせずに。 確かにユリアもセリスに強く心惹かれていた。 強い意思を宿した瞳。穏やかな笑顔。それから、ユリアに差し伸べてくれた温かく大きな手のひら。 遠い昔にユリアが失ってしまったものにとてもよく似ていた。 大好きな大好きな、優しかったあの頃の兄の姿に。 「妹に恋をするなんて」 苦々しくセリスは笑う。 ユリアも曖昧な表情で微笑んだ。 肯定も、否定もしない。